【箸渡しの由来】なぜお骨を二人で拾うの?「お箸」に込められた三途の川への橋渡しと、実際の収骨マナー

火葬場でお骨を骨壷に収める「骨上げ(拾骨)」。その際、二人一組になって一つのお骨を箸で挟む「箸渡し」という作法があります。
「なぜ二人でやるの?」「普段の食事ではやってはいけないマナーなのに……」と戸惑う方もいらっしゃるかもしれません。
実はこの動作には、故人を無事に送り出すための、日本古来の優しい願いが込められています。今回は、葬儀の現場で日々お手伝いをしている立場から、知っておくと心が少し軽くなる「箸渡しの意味」と、特にここ埼玉県での実際の流れについてお話しします。
三途の川への「橋渡し」という願い

最も代表的な理由は、言葉の響きをかけた「橋渡し」という願いです。
仏教の考えでは、亡くなった方は「三途の川」を渡ってあの世へ向かうとされています。残された家族がお箸をお骨に添えることで、
- 「この世からあの世への橋(箸)渡しをする」
- 「迷わずに無事、向こう岸へ渡れるように手助けをする」
という、故人の旅立ちをサポートする意味が込められています。
「悲しみを分かち合う」という象徴
お骨を拾うという行為は、故人との本当の別れを実感する瞬間でもあり、一人で行うにはあまりに重く、悲しい作業です。
そこで、二人で一つのお骨を支えることで、「一人では抱えきれない大きな悲しみを、みんなで分かち合う」という意味を持たせています。家族や親族が協力し合う姿こそが、故人への何よりの供養になると考えられているのです。
「逆さ事」としての箸渡し
以前の記事[葬儀でやってはいけない10選]でもご紹介した通り、葬儀の世界には日常とあえて逆のことをする「逆さ事(さかさごと)」という習わしがあります。
食事の際、二人で一つのおかずを挟み合う「合わせ箸」は、日常生活では絶対にしてはいけないマナー違反(忌み箸)です。
しかし、あえて普段はやらない動作をすることで、「死」という非日常を区別し、現世に不幸を引きずらないための境界線を引いているのです。
埼玉県の火葬場での「実際の流れ」と安心のサポート
「作法を間違えたら失礼になるかも……」と緊張される方も多いですが、どうぞ安心してください。
火葬場スタッフ(火夫さん)のサポート
収骨の際は、火葬場のスタッフ(火夫さん)が、どのお骨から拾うべきか、どの順番で行うべきかを一つひとつ丁寧に説明してくれます。 横でしっかりサポートしてくれますので、基本的にはその場での案内に従えば、何も難しいことはありません。
埼玉県での一般的なルール
私が把握している埼玉県内の多くの火葬場では、以下のような流れで行われるのが一般的です。
- 原則、1人1回: 2人1組で一度お骨を挟んで骨壺に収めたら、次の方へ箸を渡します。
- 残りはスタッフが担当: 遺族が一通り収骨を行ったあと、残りのお骨は火夫さんが丁寧に骨壺へと収めてくれます。
地域による違い
この作法は地域によって大きく異なります。例えば、東北地方などの一部地域では、遺族がすべてのお骨を拾い上げるまで行うところもあります。
知っておきたい「骨上げ」の豆知識
地域によって細かな違いはありますが、一般的な流れを知っておくと、当日さらに心に余裕が持てます。
- 足元から頭の方へ
故人があちらの世界でしっかり立って歩けるよう、足のお骨から順に拾います。 - 左右で違う箸を使うことも
左右で種類の違う箸(竹と木など)を組み合わせて使う場合があります。これも日常とは違う「逆さ事」のひとつです。
※火葬場で用意された箸を利用します。見ている限りでは別の箸は使用していません。
これらは「どれが正しく、どれが間違い」というものではありません。 その土地ごとに大切にされてきた文化ですので、それぞれの地域の風習に合わせることが大切です。埼玉県内でも場所によって多少の違いがあるかもしれませんが、基本的には「プロの案内に任せれば大丈夫」と覚えておいてください。
まとめ
「箸渡し」は、単なる形式的なマナーではありません。故人が無事に三途の川を渡り、新しい場所へ行けるよう、家族が手を取り合って手助けをする「最後の大切な共同作業」です。
次にこの作法に触れる機会があったときは、「無事に届きますように」という願いを箸に込めてみてください。その優しい気持ちこそが、何よりの手向けになるはずです。


